「サンタ・マリア・ノヴェッラ教会」は、13世紀にドミニコ会の修道士フラ・シストとフラ・リストロにより建てられた、カトリック教会のバシリカ。その後、14世紀に、修道士ヤコボ・タレンティ・ダ・ニポッツァーノにより鐘楼と聖具室が追加され、1360年に完成しました。

この教会はルネサンスの傑作といわれていますが、その後、15世紀に、ルチェッライ家の依頼で、レオン・バッティスタ・アルベルティにより、2色の大理石によるコーティングやブラインドアーチなどのフィレンツェ・ロマネスク様式を再度取り入れました。その起源は、9世紀頃のサンタ・マリア・ヴェーニェ礼拝堂。Ｔ字形の平面で、奥行きは100メートルもあり、高さと幅が等しくなるように全体の空間が分割されている、フィレンツェ・ゴシック様式の教会。

1572年には、メディチ家のコジモ1世の支持で、ファサード両脇に天文学用の器具も取り付けられました。当時、修道僧たちが薬草を栽培し、薬剤を調合していましたが、これが世界最古の薬局といわれる、サンタ・マリア・ノヴェッラで、日本でもよく知られた観光名所となっています。今でも同じ調合でさまざまなものが調合されています。

この教会は、フィレンツェでトップクラスの美しさを誇るファサードとして有名ですが、加えて、多くの芸術作品があることで有名なのです。特に、主祭壇に描かれた1577年のドメニコ・ギルランダイオ作のフレスコ画「聖母マリアとサン・ジョヴァンニの生涯」や、左側廊の3つ目には、1427年頃の作品である、マザッチョの「三位一体」などがあります。

その他にも、ゴンディ家礼拝堂のブルネレスキ作の磔刑像、ジョットによる磔刑図、1485～1489年にミケランジェロの協力により制作された、後陣壁面に描かれたドメニコ・ギルランダイオ作のフレスコ画群なども見所です。また、14世紀に完成したヴェルデ回廊には、パオロ・ウッチェッロ作のフレスコ画や、同じく14世紀に描かれたモルティ回廊のフレスコ画などもあります。